だが彼にとって、ヴァルドヴァレスは大きな家族だった。
かけがえの無い仲間だった。

…だからこそ守らなければいけない。


どんな手を使ってでも。
そう、この命が消えるまで。


するとその行く手に一人の女性が現れた。


「お帰りなさい、キャプテン。」


彼女は自分と同じような格好をして、そう微笑むと彼に手を差し伸べる。


「…ただいま。」


差し出されたその手を握り…オズはそのまま彼女の体を抱き寄せた。


ピュウ!と辺りから漏れる口笛。
黄色い声が降り注ぐ中、オズはにんまりと笑ってその耳元でそっと囁く。


「―…で、皆集まってる?」


すると彼女も彼の耳元で、


「ええ、皆待ってます。おっかないですから早く行ってください。」


そう囁いた。
そして、


「あと、早く離れてくれませんかねぇ。蹴りますよ。」


何故かぐりぐりとブーツの底で踏まれ続ける足。
だが、これでいい。

というか、いつもこう。


「…い、痛いよ。シャル。」


「勘違いされるの嫌なんです、だからど、け、!」


ボコッ!


瞬間、鳩尾に衝撃が走り「ぐえっ」と声を上げながらオズはしゃがみ込んだ。

ドッと溢れんばかりの笑い声が周りから響いて、


「これを見ないとキャプテンが帰ってきたって言う気がしねぇもんな!」


と口々に笑う賊員達。