刹那。
ブロロロロと異様な音と煙を吐いて動き出すポンコツ車。

ガタガタと尋常じゃないほど揺れ動く車体を見送りながら、女性賊員はハァと息を吐いた。


「あの人たちも物好きだよね。」


だなんて言いながらきびすを返す彼女の後姿に、男性賊員は声を投げかけて。


「…副キャプテン。どうして嘘を吐いたのですか。」


そんな彼の言葉に足を止める女性。


「なんだって?」


振り返りざまに男を見ると、彼は強面のままこちらを見ていた。


「手紙の内容ですよ。あそこに書かれたのは全てスペルの間違った暗号。本当は、


“同胞へ。


友人を連れ戻しに行く。
次の指令を待て。


P.S.くれぐれも余計な事はするな。


――オズヴァルド・ヴァン・ウォーロック”


…だったはずです。
キャプテンは女癖は悪いが、天才だ。

頭が悪いなんてあり得ない。」


そう彼が言うと彼女は大袈裟なくらい笑って、


「お前は真面目過ぎるんだよ。」


男の首をいきなり掴んだ。


「キャプテンの事はあたし達だけが知っていればいい。どうして他のクソ野郎共に教えなきゃなんねぇんだ。ああ?」


けれど男はさも当たり前のように平然と彼女を見つめ、彼女は猟奇的な視線で男を見つめ返す。


「情報は偽りでこそ真実だ。キャプテンだって本当は女好きじゃねぇかもしんねぇぞ。」