3日前。
「…姫様、おはようございます。」
「おはよう、エルバート。今日もいい天気ね。」
唯一の専属騎士であり側近でもある彼、エルバート・ローゼンハインと薔薇園で他愛のない会話をする、日常的な朝。
「そろそろ全部の薔薇が咲く頃かしら。夏は過ぎ去ったもの。私の好きな黄色の薔薇も美しく咲いているわ。」
「…ええ、まるで姫様のようです。」
クスリと笑う彼の言葉に、無意識に顔が火照ってしまう。
「全く、からかうのが得意なんだから…」
「ふふ、これは失敬。…ところで、何故黄色がお好きで?」
エルバートの質問に答えるように、私は近くの黄色い薔薇に寄り添った。
ほのかな薔薇の匂いが鼻をくすぐる。
「お母様が…初めて私に下さった薔薇の色なの。」
風が沢山の薔薇たちを揺らす。
「黄色は好きよ。さほど主張している訳でもなく、だからといって控えてる訳でもない。私は、そういう女性になりたいの。」
「姫様…。」
「だから、貴方の金色の髪も大好きよエルバート。勿論その紫の瞳も。」