◇ ◆ ◇


「あと、25日。」


声がして、彼女は振り返った。


「……父様」


するとそこには己の父の姿が。


「何用ですか。」


少女は、睨むようにして…紅い瞳を彼に向ける。
だが、そんなのお構いなしに父は微笑を浮かべたまま、歩み寄ってきて。


「…あの倅は、お前の為に必ず帰ってくるだろう。」


彼女の髪を触る。


「だが、母親を見つけられず、手掛かりもなく…只、私の人形となる運命。」


余裕の表情を浮かべ、


「…笑えるな。」


待ちわびているかのようにそう言う父。

だが。


「…ハインツは、帰ってこない。」


彼女はそんな父を睨み、


「アンタの言いなりの人形なんかには…」


憎み、


「絶対にならない!」


地獄のそこから沸き上がるような声で叫んだ。


―…パンッ。


刹那、響く鎖の音に、乾いた音。

頬を叩かれ…床にひれ伏す彼女は唇を噛み締める。