そう、真剣に告げた途端、先程まで眉をひそめていたエルバートの表情が…綻んで。


「そう…ですか。」


剣を下ろし、緊迫した空気が解かれる。

そしてエルバートは私を見て…いつものように笑った。


「少し、寂しいですね。」


そして彼は今度はハイネに向き直ると、


「どうやら貴方は、憎むべき敵ではないようです。」


左手を胸に当てて…深く頭を下げる。


「私の名はエルバート・ローゼンハイン。先程の無礼…謹んでお詫び申し上げます。」


そんな彼の態度に、舌打ちしながら…ハイネは「最初からそうしとけよ」とブツブツ文句を言った。


「長きに渡り、姫様を守ってくださりありがとうございました。私からも、お礼を言わせてください。」


それにしても、流石は城で働いていた騎士と言った所だろうか。

只ならぬ礼儀作法に少々怖気づいたのか…


「…だ、だったら先にそう言え、アホ!」


ハイネは、ぶっきら棒にそう言うと何処かへ行ってしまう。

すると今度は屋根から飛び降りたオズが、


「ハイネ以外の男友達は欲しくないんで。じゃ。」


と、エルバートに言い残し…ハイネの後ろを追って去っていった。


「ち、ちょっとオズ!何てこと言うの!」


そんな彼の背中に向かって声を張り上げると…突然エルバートが笑い出す。