「…、真実を語るには、口だけでは少なすぎる。」


何を思ったのか、エルバートは再び剣を構えて。
その鈍く光る刃を、ハイネの腹部めがけ、

突き刺したのだ。


「……!」


目を見開いて、思わず口に手を当てる私。

ハイネの目も大きく見開かれて…。


「…ッハ!…つまんねぇ冗談はよせよ!」


しかし、その口元はゆっくりと歪んだ。


…エルバートが突き刺したはずの剣は、ハイネのサーベルによって防がれていて。
逆に、ハイネの左手はいつの間にか剣を持ち…その刃はエルバートの首筋に添えられていた。


「それに、俺を刺してもアンタはどの道死んでたぜ。」


そして余裕げに言うハイネの視線の先。


「…アンタが100年に一人の逸材なら、俺達は100年に一組の異色コンビだよ。」


それを追って斜め上を見上げると、屋根の上で弓を構えるオズの姿があった。


「………。」


エルバートは、そのままの体制で…私を見る。


「姫様。…彼は貴女の何ですか。」


細められた紫色の瞳。


「…貴女の口から聞きたい。真実を。」


その瞳に捕らえられた私は…小さく息を呑んだ。
私を見るハイネ、弓を構えたままのオズ。

沢山の視線の中、私は言った。


「か…彼は、ハイネは…」


「………。」



「私の、好きな人よ。」