花嫁と咎人


「いやでもお前、結構目ぇ開けて寝てたの見たことあるぜ?」


「嘘だ。」


「いや、ホント。本読んでるのかなと思ったら、完全にいびきかいて寝てたことあるし。」


「……いや、俺は信じない。」


「でもアレは覚えてるだろ?観光客用の顔出しパネルのやつ。」


「………。」


「お前目ぇ開けたまま寝てたから、ロナと一緒にお前の顔突っ込んどいたんだよ。そしたら観光客みんな大爆笑してたな!皆カメラ構えてさぁ。気がついたらそうだっただろ?」


「…チッ。」


舌打ちをする俺に向かって「んもう、素直じゃないんだからぁ」とオカマ口調で言ってくるオズを懇親の一撃で張り倒した。


「痛ったいな!もう!……でもさ、あの時は楽しかったよね。ロナもいたしさ、まだお前も家から出られる頃だったし。」


そんなオズは、バルコニーの鉄の柵に肘をかけながら月を見上げる。


「…ああ。」


月が明るくて、少しだけ目に染みて。


「もしさ、ロナが生きてたら…オレ、何か変わってたのかな…。」


眉を下げて月を見上げるオズが余りにも痛々しくて、俺はオズの頭を二回ほど叩いた。


「あれは…俺が悪かった。」


「…ハインツは悪くないってば。」


「でもロナは…アンタの事を本気で愛してた。それは本当だった。」


月明かり、甦る残像。

宵闇に散ったのは…生の煌き。