「でも、“悪魔の子”って一体何かしら?」


フランの問いに、ジャックが答える。


「“悪魔の子”っていうのは、姉と弟の赤毛の姉弟でよ。なんでもその姉弟が行く家々は全部感染したって言う話だ。2人で一家全滅させたんだよ。」


…馬鹿な。
そんな力を持つ人間がいる訳がない。


「で、実はその姉弟。今はその魔女が住んでた家にいるんだ。なんでもついこの間、魔女が死んだかなんかで…葬儀を頼まれてよ。」



…死ん、だ?


「あーもーそれが怖いの何の。呪われるのが怖いわ、その魔女には“例の水”の恩があるわで断れなくてよ。一応棺桶と墓石だけ置いてきてやったんだ。」


ふと、フランの視線が俺に向けられたのが分かった。

だけど俺はジャックの顔を見つめたまま、ただただ硬直するばかりで。
体は強張り、心臓の音は激しさを増す。


「まぁあの魔女が作った『例の水』を飲んだお陰で、俺達は緋色の死神にやられなくて済んだモンだし…なぁ。」


魔女が作った『例の水』を飲んだお陰で、俺達は緋色の死神にやられなくて済んだ…だと?


「なあオッサン、その『例の水』は病を治せるのか?」


「…ん?ああ、そういえば、この町でも何人か感染者は出たが…これを飲ませたら殆どが治ったな。…それがどうかしたのか?」


ジャックの問いに俺は「いや、別に…」と口を濁らせて顎に手を添えた。

そして途端に頭に思い浮かんだのは、この国が鎖国中であると言う事。
勿論新しい技術は入ってこず、出る事もない。

つまり“誰かが教えなければ、予防は不可能”

そう考えると、眉間にはシワがいくつも寄って。
心臓の音だけが俺の聴覚を制す。


…ああ、どうか。