ハイネは、そこまで言って小さく息を吐いた。
遠くを見つめる目。
靡く銀色の髪。
この容姿を持ってしまったが故に、その家に生まれてしまったが故に。
彼は―…。
そして再び口を開く。
「息子は…義理の父に、母親を捜すと言った。」
―…勿論、始めは全く相手にされなかった。
でも、彼は諦めなかった。
このままこの男に振り回される人生はごめんだと思った。
この世界を敵に回してもいい。
どれだけ周りから非難されようと構わない。
全ては苦痛から解放される為。
もう一度母に会いたい。
その一心で…息子は父に条件を突き出した。
『―…5年以内に母及びに遺品を見つけられなければ、自分の人生を義父に差し出す。
そして5年以内に自分が戻らなければ…姉の命を捧げる。』
だが、代わりにこういう条件も突き出して。
『もし5年以内に母を見つけた、あるいは母の遺品を見つけた時…その時は義父を…国外追放する』
義父は、承諾した。
馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの表情をする義父、だが息子は本気だった。
たちまち家の事は国中に知れ渡り、話はほぼ世界にも広まった。
一応経済的にも、国交的にも有名な名家だ。
勿論息子もその程度のことなら予想していた。
世界がこの事件の行く末を見守る中、彼は姉を残し…付き人を連れ添うことなく、ひとり世界を回りはじめた。
そしてちょうど、140ヵ国目。
そこは鎖国の続く…不便な国。
運悪く船が座礁し…漂着した彼につけられた肩書きは…

