それは、時期当主になる者は、


銀色の髪と青い瞳を持つものに限る事。


つまり掟の内容を満たした子どもが生まれないと駄目って事だ。


そして時が経ち、やがて二人の間には第一子が生まれた。
性は女。
生まれながらにして持ち合わせた、美しい銀色の髪。

けれど…その瞳は、まるで血の色の様に赫い“真紅”だった。

勿論、その子は当主にはなれない。

女性は嘆いた。

しかし、不幸な事に、その後も中々子どもができず、
次第に名家は存続の危機に立たされた。

こんな事は初めての事例だった。
はなから権力だけを目当てに結婚をした夫は怒り狂い、妻である彼女に暴力を振るった。

子どもにも合わせず、夫は妻を毎日のようにいたぶり続け…
耐え兼ねた彼女は、とうとう家から逃げ去ってしまう。


―…飛び出した彼女は行く当ても無く国を歩き続けた。

はなからお嬢様として育てられてきた彼女には、全てが分からない事ばかり。
勿論、華美な服装が裏目に出て…賊に襲われそうになった。

でも、そんな所を一人の男に救われ…彼女は彼の元へと身を寄せる。


実はその男、元を辿れば他国の王家の末裔。
それなのに牧場を営んでいる…変な男だった。


だが彼女はそんな男の性格や、優しさに惚れ…全てを話した上で、彼と共に暮らす事になった。

暫くして一人の男の子を授かったが、幸か不幸か、その子は銀色の髪に青い瞳を持ち合わせていた。
でも、家を出てきてしまった彼女にとってそんな事はどうでもいいこと。

彼女は自分の手で、せめてこの子だけはと思い必死に育てた。


そして月日は流れ…息子が7歳になった時。


悲劇は起きた。


夫が家を訪ねてきたのだ。
否…訪ねるというよりも強引に家に押し入り…その場で男を殺し、息子と彼女を強引に実家へと連れ去った。


夫は二人を家に連れ帰るなり、彼女をあろう事か国外に追放してしまった。

父親を殺され、母親と引きさかれた息子は、毎日義理の父親である夫から酷い仕打ちを受けた。
…掟により時期当主の命を受けた息子は毎日毎日やりたくも無い事を学ばされ、
自らの命を守るために、毎日の様に猛毒を飲まされた。
酷い痛みと、苦しみの日々から逃れることも、家から出ることも殆ど出来ずに、それでも息子はそれに耐えることしかできなかった。