唇が離れると同時に強く抱きしめられると、私の思考回路は完全に停止する。

何が起こっているのか分からなかった。
何度瞬きしても分からなかった。



「俺が好きなのは…フランだけだよ」



でも、その瞬間…また涙が溢れて…。
余計意味が分からなくて、


「どう、して…、」


ハイネはアーニャちゃんが好きだった訳ではなかったの?
じゃあ昨日のは一体何だったの?


「どうして…?」


泣き続ける私の頬をそっと撫で、彼は口を開く。


「あの女とは何の関係も無い。後で全部話すから。信じて欲しい。」


なら、ハイネは本当に…本当に…


「ハイネが…好きなのは…、」


「フランだけだ。」


瞬間、涙は色を変え、とめどなく溢れ出した。
嬉しさの余り、両手を彼の頬に添え、額を合わせる。

もう、迷わなくてもいい。
悩まなくてもいい。

好き。

あなたが好き。


これでようやく伝えられる。


私の本当の、素直な気持ち。





「私も、あなたのことが大好きよ…!」