「…お前…まさか小瓶の中にあるやつ全部…飲ませたんじゃないだろうな…、」


するとアーニャは震える声でオズに告げる。


「……ウ…ウーズリヒテットなら、このくらいで…し、死なないでしょ…それに彼、な、慣れてるみたい……だったから…」


「馬鹿かてめぇ!!ハインツが飲んでたのはそんな甘いモンじゃねぇよ!」


オズはアーニャをこれでもかと言わんばかりに睨みつけ、彼女に真実を突きつけた。


「…教えてやるよ、小瓶の中身…!アレはシザリア…この世界中で一番の猛毒だ!」


「………、シザ…リア…?」


瞬間、アーニャは狂ったように笑い始めた。
だがすぐに今度は大声で泣き始める。

感情の荒波に飲まれ、泣き崩れるアーニャから突き飛ばすようにして手を離し、再びハイネに駆け寄る。


「脈が弱くなってる…、どうしよう、このままじゃ…!」


代わりにハイネを診ていてくれていたジィンが潤んだ目でオズを見る。

もう頭の中が真っ白になりそうだった。

…駄目だ、ハインツを死なせたら…。

こいつが死んだら何もかもが終わりだ…!

考えろ、シザリアに効く薬…
オレはずっとハインツといただろ…!

頭の中で記憶を辿り、思い起こす。
苦しそうな表情で寝込む幼いハインツ。
何度も盗み見た彼の異常な投薬記録。

思い出せ、思い出せ…!


『内緒だけど、強い酒を飲むと少し楽になるんだ。』


そうしている内に、ふと、頭の中をハイネの言葉がよぎった。

強い酒。


「…強い酒だ…!」


「…え…?!」


思い立ったが否や、オズは自分の荷物をあさりに行った。
そしてひったくるようにして掴んだのは箱に入った酒。
以前立ち寄った国で大金をはたいて買った思い出の1本だったが、もうそんなことはどうでもいい。
慌てて戻ってくると、ジィンが酷く慌てた様子でハイネにしきりに声をかけていて。