花嫁と咎人


それからボソッと、まるで自分を責めるかのように彼は続ける。


「…っていうかどっちかって言うと…知らないようにしてたんだ、お前のこと。
ごめん…勝手にこんなことして。
でも結局、手紙読んだらお前のことが放っておけなくてさ…。」


「……。」


「賊頭なのに、勝手に国飛び出して無責任だよな…オレ。
でも、そのくらい怖くなったんだ、もしお前まで失ったら…もうオレ多分立ち直れない。
こんな身勝手なことしておいて、お前に合わせる顔も無いって思ってたのに…」


俺は暫く黙ったままオズを見ていた。
複雑な気持ちだったが、今なら素直に再会を喜べる気がする。


「まあ、許せないことの方が多いけどな。
…また会えて良かった。
俺こそお前にはもう会えないと思ってたよ。」


フッと笑って拳を付き出せば、凄く悲しそうな笑みを、されど酷く幸福そうな笑みを浮かべ、オズもまた自らの拳を合わせた。


「全く、よく出来た坊ちゃんで。」


「…良かったな、身長伸びて。」


「余計なお世話。」


「もうチビなんて言わせねーよ。」とコーヒーを口に含む彼を見ながら、頬杖をつく。

嗚呼、懐かしい。
遠い昔の思い出がふわりと蘇る。


『くっそー!なんでお前だけ身長伸びるの!うぜぇぇぇ!』

『成長期だから仕方ないだろ…』

『うっわー!声も低くなってる!うぜえぇぇ!』


オズの馬鹿みたいな嫉妬を思い出し、むせ返りながら笑った。


「…なんだよ。」

と眉間にしわを寄せこちらを向くオズに、「なんでもない。」と咳払いして、視線を逸らす。

そんな時代もあった。
確かに、楽しい思い出もあった。

空になったコーヒーカップを洗いにオズが席を外す。

しかし俺は過去を懐かしみつつも、その隙にポケットから薄緑色の液体が入った小瓶を取り出した。
そして余りの紅茶の中に五分の一程度それを入れると、一気に飲み干す。