花嫁と咎人


そして止めの一言を言うかのように、ハイネは一段と低いトーンで声を押し殺し、男に言う。


「いいか…、今度こいつに手ぇ出してみろ。テメェぶっ殺して、賊ごと歴史から抹消してやる…。」


それを聞いた男は小さく声を上げると、


「い、い…嫌です。」


何度も首を振った。


…賊?

ふと私はその言葉が気にかかって。
二人がどういう関係で、どういう立場なのか全然分からないけれど…
どうやら表立った職の人では無いみたい。
特にこのオズっていう男の人は…。

とても気になったけれど、今なにやらを聞ける空気じゃないのは目に見えて分かる。
私はハイネの上着をぎゅっと握り締めて、雨の寒さに耐えた。


…そして、事態がどう転がったのか分からないけれど…
ひとまず私達はそのオズという男の人の家に行く事にした。


「…アンタ、家がありながら…金がねぇとか抜かしてたのか…?」


その家から目を離すなり、鬼のような形相で男の人を睨む彼。


「い、いやっ違うんだって!ほんの数日前まで付き合ってた彼女がさ…」


どうやら彼女さんはお金持ちだったらしく、家を買ったけれど…彼の女癖の悪さに耐えかねて家を出て行ってしまった…と男は弁解した。


「死ねよ。」


ハイネは男の話を聞くなり物凄く不機嫌そうに顔を歪め、吐き捨てるように呟くと、それを機に口を開かなくなってしまった。


それから体を打ちつけるような強い雨に耐えて歩く事数十分。

目の前には場違いなほど、赤く映えた屋根の大きな家が見えた。


「ハイ、ここがオレの家!」


得意げに男が言った途端、ハイネの拳が顔面に直撃したのは言うまでもなく。
鼻を押さえたまま彼に案内され、私達は家の中に入った。