「馬鹿かアンタは…!何で…!俺の言う事を聞かなかった!」


ハイネは本気で怒っていた。
かつての地下牢で怒鳴られた時よりもずっと凄い気迫で。

掴まれた肩も痛んだが、心もとても痛んだ。


「言ったよな、どこにも行くなって!それなのに…!いい加減にしろよ!」


涙が、止まらない。
私は約束を破ってしまった。

ハイネとの約束を、破ってしまった。


「もう少しで、取り返しの着かない事になってたかもしんねぇんだぞ!分かってんのか!」


その時、ぽたりぽたりと雨が降り出して。


「もっと自分を知れ!…ひとりで何でも出来ると思うな!」


次第に強くなってきた雨は…私の涙と同じくらいに沢山降り注いだ。


「…俺が、俺がどれだけ心配したと思ってんだ…、この…馬鹿…!」


そしてハイネは強く私を抱きしめる。


「ご、めん…なさい…」


私はその腕の中で、謝る事しか出来なくて。


「ごめんなさい…!」


感情が溢れ出し大声で泣き叫ぶ私。


「心配させないでくれ、お願いだから…。」


ハイネの声が優しく私を包み込む。
少しだけ…私を抱きしめる彼の腕が震えているのが分かった。

本当に、心配してくれてたのね…。