「ねぇ、こんなに期待されてるよ。頑張らなきゃだね」
普段の明るくて大きい声から遠く離れた掠れた声で彼女は言った。
そうして顔を両手で覆って嗚咽交じりに泣き出した。
正面に座ってる彼女は、由月。
私と同じチューバの2年。



チューバは金管楽器のひとつ。
大きく重い楽器で、低音を担当する吹奏楽の縁の下の力持ち。
認知度は低いけれどとても重要な役割を持っている…と自負してる。
私と由月はこの二津木高校吹奏楽部のチューバとして2年2人で頑張ってきた。



でも、問題があった。



金管八重奏はトランペット、ホルン、トロンボーン、ユーフォニウム、チューバで構成される。
どのパートに何人いるかは曲によりけりだけど、ほとんどの曲はチューバは一人。
バランスことを考えたりするとチューバが2人出るなんて不可能に近い。



つまり、私か由月、どちらかしか大会には出られないんだ。