中2、夏。
横断歩道の向かいに見えた大好きな顔。
信号が青になり、走って彼の元へ向かう。彼も人が少なくなったのを見計らってこちらへ歩いてくる。あと少しで彼の元へ...。
いきなり手首をつかまれ、後ろにひっぱられた。
その瞬間、目の前で彼と車が衝突した。目の前で彼の体が天に舞い上がり、そのまま勢いよく地面にたたきつけられた。彼の頭から赤い液体がものすごい速さで流れ出る。
「ひろ..や?大也!?」
どれだけ叫んでも彼の体はピクリともしない。
アタシは目の前が真っ暗になった。
「いやああぁぁぁっ!大也ぁ、大也ぁぁぁっっ!!」
アタシはそのまま、アタシを助けてくれた女の人の胸に顔をうずめ、泣き崩れた。

中3、春。
高校受験の合格発表の日。
駅で彼と待ち合わせた。ソワソワしていると、電車から降りてくる愛しい人の姿。自然と顔がほころぶ。彼もアタシに気が付いたようでこっちに走ってくる。
「ごめんな、待った?」
「ううん!全然、行こ?」
優しい彼と手をつないで歩き始めた。
そのとき遠くで パンッ と音がした。振り返ると、ほぼ同時に彼が倒れた。驚いて彼を見ると、後頭部に穴をあけ、うつぶせに地面に倒れていた。その穴から真っ赤な血が滝の様に流れ出す。
「やっ、奈央斗?イヤだ、イヤだイヤだイヤだ...」
アタシはそのまま気を失った。
アタシを襲った2つの悪夢。

どちらも必ず生きている。

そう思って自分を支えていた。
でも、現実は残酷で。
2人は二度と目を開けることなく、この世を去った。アタシを置いて。
2人が残していったもの、それは...真っ暗な光の届かない世界。