翌朝、いつまでたっても朝が弱くて起きられないあたしを起こして、朝食までたべさせて。
眠い、行きたくない、とぐずるあたしを無理矢理連れ出しバイクに乗せ大学に落として行ったあと、自分はそのままバイトへと向かった。
(しっかり単位を取ってる3年生の余裕だ。むかつく)
――バシッ
背中に鈍い痛みが走り、半ば無意識で睨みつけながら振り向くと、朝から上機嫌な我が親友、栞。
「おっはよ、ちさ」
「普通に痛いんですけど!」
彼女お気に入りのKidsonの奇襲攻撃。
何事にも限度ってものがあるでしょーが。
ごめんごめん、と口だけの謝罪の言葉。
ランチタイムに、期間限定苺プリンあたり奢ってもらわなくちゃ。
脳内で勝手にランチの予定を立てていると、いきなり栞があたしを見てニヤつきだした。
なんなのよ。
その薄気味悪い笑顔は!!
「なぁんだ〜。礼さんと仲直りしたんだ」
そういう栞の目線はまっすぐにあたしの首元。
胸元にきらりと光る華奢なネックレスは、去年の誕生日に礼が買ってくれたものだ。
ピンクゴールドで小さなリボンを模ったそれは、完璧にあたし好みで。
礼がポケットから取り出したときは、興奮のあまり思わず絶叫しちゃったっけ。
常に肌身離さず身につけているけど、喧嘩中となれば話は別。
ちゃんと仲直りするまで、泣く泣く家でお留守番してもらっている。
つまりあたしの周りの人間は、あたしの胸元を見て喧嘩中かどうかを判断するというわけ。
(そんなことなくても、あたしの機嫌はすこぶる悪いから、察せると思うんだけど)
