キッチンから出てきた礼の手の中には、きらきらと輝く宝物。
ふわっふわな卵に、たっぷりかけられたトマトソース。
中までは見えないけど、きっと信じられないくらい美味なチキンライスが溢れそうなくらい入ってるに違いない。
「お味はいかがですか」
夢中で頬張るあたしを楽しそうに見つめる礼。
そんなこと、聞かなくても分かるでしょ!!
「もう、最っ高!」
ぷっと吹き出して、綺麗な指であたしの口端に触れる。(トマトソースがついていたみたいだ)
付き合って2年も経つのに、そんななんでもない仕草にいちいちどきどきする自分が恥ずかしい。
「機嫌は直りました?」
まるでそうだと分かってるみたいに、笑顔で聞いてくる礼からふいと目を逸らした。
そんな風に聞かれたら、たとえそうでも答えられないじゃない。
いまだ不貞腐れるあたしを横目に。
「デザートもあるけどいる?」
そう言ってポケットから取り出したそれは、他でもない、あたしが愛してやまない、かの有名なベルギー産チョコレート。
分かってるよ。
あの飲み会で本当はなんにもなくて、あの女が勝手にやったんだろうってこと。
礼はきっとなんにも悪くないってこと。
(大方、トイレにでも立った時にやられたんだろう)
だから、こんな風にあたしの機嫌なんて取る必要もないのに。
こんなことくらいでヤキモチ焼くなよ、って怒ったって仕方ないのに。
それでも、あたしはまだ礼に機嫌とってもらえるんだなって。
すきでいてくれてるんだなって、そう思えるから嬉しいの。
