―――見つからないし。
もうやだ。もういい。
諦めて帰ろうと、来た道を戻ろうとする。
が。
え…ここ、どこ?
たぶん大広間を抜け出してから30分くらいだろう。
夢中になってるうちに迷っちゃった…?
“めちゃくちゃ広くて入り組んでるから、迷わないように~”
“特に、ちー。お前は絶対一人で出歩くな”
礼の言葉が脳内でエンドレスリピート。
やばい、礼にばれたら絶対怒られる。
これ以上気まずくなりたくないのに。
何とかして自力で戻んなきゃ。
そうだ、携帯!
こんなときこその現代ツール。
栞あたりに連絡して、なんとかしてもらおう。
ポケットに手を突っ込むも、手に触れるのはシュシュと飴玉のみ。
大広間に置いたまんまで出てきてしまった。
あたしのささやかな希望の光は、無残にも一瞬で消え失せた。
さらに歩き続けること、30分。
事態はさらに最悪。
迷いに迷って、さっきの道すら分からない。
いくら広いとはいえ、入り組んでるとはいえ、この歳になって建物内で迷子なんて。
本当にどんだけよ、あたし。
――大人しく礼の言うこと、聞いてればよかった。
意地張って、強がって。
勝手なことばかりして、結局いっつもこうなるんだから。
ミルクティーの代わり、仕方なく買ったカフェオレを口に含む。
苦い。まずい。
やっぱりこんなのきらい。
寒いし、暗いし、心細いし。
なんかもう、泣きたくなってきた。
