「…ちさ!ちさってば!!起きて、着いたよー!」
「ん…」
目を擦りながら体を起こすと。
どアップすぎるくらいの栞が写る。
近い近い!!
あたし達の物理的な距離は、もはや10cmもなかった。
寝たふりだけのつもりだったのに、いつのまにか本当に眠ってたみたいだった。
バスを降りると、一面銀世界。
「うわー!すっごい!!雪だらけ!!」
こんなにたくさんの雪見たの初めてだ。
テンションが上がらないわけがない。
「ちーちゃん、興奮するのは分かるけど。とりあえず一回ホテル行くって」
今にでも雪だるま創作を始めそうなあたしを制止する先輩たちの声に、渋々荷物を持って、ホテルへと向かった。
てか、ホテルでかすぎない?
一体どんだけ広いんだと聞きたくなるくらいの広大な面積。
幹事の礼と大地くん曰く、普通のホテルだけじゃなくて、他にもいろんな建物が混同してるらしい。
つまり、めちゃくちゃ広くて入り組んでるんだって。
「だから迷わないように、なるべく遠くまで行くなよ〜」
みんなが一斉に“はーい”と返事をする。
もちろん、あたしも。
なのに。
「特に、ちー。お前は絶対一人で出歩くな」
自他ともに認める、超方向音痴なあたし。
入学当初はキャンパス内で迷いまくって、授業はほとんど遅刻。
それ故の警告のお言葉。
