集合場所に着き、ふたりで乗り合わせて来たタクシーを降りると、そこにはバスが1台停まっていた。

わざわざバス借りたんだ…
なんか超本格的じゃん。

高校時代の修学旅行を思い出す。
でもこれだけの大人数ともなれば、バス1台借りたほうが安いのかもしれない。


「ちさーっ、こっちこっち!」

バスの近くでぶんぶんと手を振る栞。
その傍らに大地くんもいた。

タクシートランクからキャリーバッグを取り出そうと裏手に回ると、礼がすでに二人分、降ろしてくれていた。
…こんなときでさえ、優しいんだから。



「え、まさか…まだ礼さんとケンカしたまんまなの?」

微妙な空気を感じ取ったのか、栞が小声で聞いてくる。

「ケンカっていうか…まだ気まずいままってだけだもん」

不貞腐れたように、唇を尖らせてみる。

“それを世間一般では、ケンカ中だって言うんだよ”

尤もなこと、言わないでよ。
誰よりあたしが一番分かってるっての。
だいたい喧嘩かどうかもわかんないもん。

栞には少しだけ話していた。
スノボ旅行を盛り下げたくなかったから、蘭さんに宣戦布告されたことは言わなかったけれど、礼に別れるって言っちゃったことを伝えると、それはもう、怒られた。



「おーい、そこの4人!早くバス乗ってよー。もうすぐ出発するって〜」

バスの中にいる先輩が、窓から身を乗り出して声をかけてくる。
あたしらが最後だったのか。
キャリーバッグをバスの下のトランクに預けて、車内へ乗り込んだ。


わいわいと騒がしい車内。
もうお菓子を空けてる人もいれば、トランプ大会もすでに開催されている。
挙げ句の果てには、チューハイを空けて飲み始めてる人まで。


――おいおいおい。

まだ朝っぱらですけど。
お菓子やトランプ大会はまだしも、初っ端からチューハイって…

とりあえずそれは無視にきめ、席に落ち着くことのほうが先決。
先輩たちに聞くと、『後ろに4つ残してあるよー』とのこと。

すでに宴会となりつつある前方を抜けて、後ろへと移動した。