「いやだなんて…。大体なんであたしがそんなこと思うんですか?」
「気にしてるんじゃない?私と礼とのこと」
“結構、分かりやすいよね”
ふふっと余裕顔で笑う蘭さんに、顔を上げることができない。
今の彼女はあたしなのに、なんでこんな負けてるみたいな気分になるんだろう。
「不安?私に盗られちゃう、とか思ってる?」
「な、んで、あなたにそんなこと言われなくちゃいけないの!!」
ついに、感情が爆発してしまった。
黙ってあたしを見据え、カフェオレに手をつける彼女は動揺ひとつ見せない。
逃げるように彼女の前から立ち去った自分が情けない。
静まり返った自分の部屋。
―――礼に会いたい。
今日は夜までバイトだって言ってたっけ。
でも、どうしても会いたい。
『今日バイト終わったら会えない?ちょっとでいいから。会いにきて』
会いに行く、とは言わなかった。
前に夜10時くらいに急に会いたくなって、驚かせてやろうと連絡せずに礼の家に行ったら、ものすごく怒られたという過去があるから。
こんな時間にふらふら出歩くな、とあたしに対してはじめて怒った礼をもう心配させたくなくて、夜遊びだって控えている。
どうしても行きたいときは、許可を取って迎えに来てもらう。(親か)
自分勝手で相手のことなんて考えられなかったあたしが、相手のことを思いやるようになれるなんて。
礼のバイトが終わるまで無駄に掃除をしてみたり、テレビを見てみたり、課題をしてみたり。
それなのに、一向に時間は進まない。
――なんか、この部屋ってこんなに広かったっけ。
礼がいないだけで、すごく広く感じる。
ヒーターだってつけているのに、妙に肌寒い。
結局、一人きりの部屋に耐えられなくて
夕飯も兼ね『てっちゃん』へ向かった。
