宴会も一時間以上経過。
あたしは相変わらず、蘭さんが気になって仕方ない。
でも、礼に近づく様子はなく、そろそろ心配もなくなってきた頃だった。
「みなさん、注目~!」
礼と大地君が前に出て、注意を引く。
あたしもみんなも、やっとか!と前を向く。
「え~、みなさんすでにご存知かと思いますが…」
前の二人が旅行の詳細を話し始める。
そして、完全に授業のレジュメと思われる紙を全体に回し『参加者は名前を書くように』という指示をだす。
(そんなことにレジュメを使っていいのか)
そこまでは、よかった。
そう、“そこまで”は。
「へぇ~、スノボかぁ。楽しそうだね!」
紙の表を見ながら言う、一人の美女。
そして彼女に熱い視線を送る、一人の男。
「じゃあ、蘭ちゃんも行こうよ!」
遠藤~~っ!!!
お前、さっきからロクなことしない!
挙げ句の果てには、勝手に自分の名前と一緒に『伊吹 蘭(ハートマーク)』と書き出す始末。
「え、でも私何の関係もないし…」
「そんな寂しいこと言わないでよ~。ここの奴らだって、気の合うのが適当に集まってるだけだし!」
周りの人も反対する理由がないのか。
一緒になって誘うか、関心がないのかのどちらかで(多分ほとんどが後者だろう)、こうなったら、止められる人はいない。
「礼は?構わない?」
「別に…俺に許可とる必要なくね?」
あくまで笑顔で答える。
表情とは裏腹に、その言葉は冷たいもの。
構わないかって、普通に幹事として答えればいいだけなのに。
礼が女の子にこんな冷たい態度をとることなんてない。
…だから、余計に不安なんだってば。