「やっと愛しのJILL様もあたしの胸元に返り咲きだよ」

そういうあたしに、へらへらと更にニヤつき顔を見せる栞。

もうっ!
一体なんだって言うのよ!!


「そーじゃなくてー。昨夜は激しかったみたいね~」

なんなら語尾にハートマークまでついていそうな口調。
全然分からないといった顔のあたしの首元に指先をあてる。


―――!

首元にくっきりとついた赤い所有印。
それを見て愕然とうなだれるあたし。

“ピンク”なんて生半可なものじゃない。
パールピンクに彩られた栞のネイルと比べてみても、その違いは一目瞭然。
しかも、その数が尋常じゃない。

こんなのついてたっけ?
鏡の前に立っても気づかなかったなんて。
どんだけ惚気てたんだ、自分。


見えるとこにはつけるなって言ってるのに、礼のやつ!!
こんなのばれたら、愛の営み(もといセックス)をしてましたってばればれじゃないか。
なにが悲しくて、大学構内で自分のセックスライフを公表しなきゃいけないのよ。

絆創膏なんかで隠したら余計目立つだけ。
観念して、そのまま放置することにした。


このことで礼に抗議しても、どうせ奴を喜ばすだけだと過去の経験から判断して、それも断念。

あたしの嘆きは誰にも届かない。