【悪口3】(紗良視線)
「……………。」
「……………。」
いつも馬鹿みたいに喋る瑛斗は、今日は無言で歩いていた。
不機嫌さを隠しきれていない私の雰囲気がそうさせているのかもしれないけれど。
瑛斗を横目で見たら気づいたのか小さく独り言のように言った。
「…紗良ってさ、…俺を頼ったりしねぇよな」
「………」
その言葉にびっくりしてつい立ち止まってしまった。
そんなあたしを見てばつが悪そうに俯いて「ごめん」と言う。
今にも泣き出しそうなくらい悲しい顔をする瑛斗を見て、不謹慎だけど…少し嬉しくなった。
「プライドがあるんだよね」
「………は?」
「……私、今まで瑛斗だけじゃなくて親にも他の友達にも"相談"ってしたことないの」
瑛斗がゆっくり顔を上げた。
「信頼してるしてないじゃなくて、私のプライドの問題」
「…………。」
何か言ってくるかと思ったけど何も言わないからそのまま話を続ける。
「もちろん言わなければならないことは言うけど、必要がないと思ったら言わない」
辛いことは別に言う必要ない。
共有する必要もない。
必要もないし、したいとも思わない。
「ごめんね」
「紗良…」
それに、どんな辛いことがあっても、
「相談なんてしなくても、瑛斗は居てくれるだけで私の支えだから」
どんなに心が苦しくなっても、
「頼ってないわけじゃない。…瑛斗が居てくれるから頑張れるから」
瑛斗が隣で笑ってくれることと比べたら
取るに足らないことだと、
心からそう思うから。
「…俺、」
それが私を包む。
その声が、笑顔が、私を支える。
「一生紗良の隣にいるから…絶対」
「……ありがとう」
瑛斗がそうして居てくれる限り、
何があっても私は私でいられる。
でも……
「…でも、こんなこともう二度と言わないからね」
「あ、紗良 照れてる?」
「うるさい!」

