「んーっとね?」
「おう…」
「別に決めてないの!」

そう言って沙雪はえへへ、と笑った。

「えへへ、じゃねぇって!」
「んー…じゃあ、デートしよっか?悠ちゃん!」
「はぁ!?俺、相談されに来たんじゃないの?」

僕がそう言うと沙雪は僕の服の袖をきゅっと掴んだ。

「…だめ?」

僕を少し上目遣いで見つめる沙雪。
…僕は、沙雪に頼まれると断れないみたいだ。
沙雪はそれを知っていてこんな風にするのだろうか?

「しょうがないなぁ…」
「やったぁ!悠ちゃん、大好きー!」

ぎゅっ、と、好きな子に抱きつかれて困る奴なんているんだろうか?
僕の場合、沙雪は親友の彼女で。
だけど嬉しくて。

親友の彼女なのに、
この時間がずっと続けばいい。
なんて考えてしまう。

『悠ちゃん』

そう呼ぶのも、沙雪だけで。

『悠ちゃん』

沙雪に『ちゃん』付けで呼ばれるのも僕だけで。

少しだけ特別な気がしてしまう。

そんなはず、無いのに。