「悠ちゃん!!」
「…沙雪、」

座り込んでいた僕は立ち上がって手を挙げた。
沙雪は小走りで近づいてくる。

「ごめんね、待った?」
「ぷっ…全然?」

沙雪の台詞を聞いた途端、僕は笑ってしまった。
…あまりにも、漫画や小説と同じすぎて。
それに、沙雪にこう言われると、なんだかさっきまで寒い、と
思っていたのが嘘みたいに平気になる。

「ちょ、なんで笑ってるのよー!」
「や、別に?」
「あ、ねぇねぇ悠ちゃん!この服、どぉ?」

沙雪は僕に向かって少し得意げに微笑むと自分の着ているスカートとトップスを触って見せた。

「…いいんじゃない?」
「もうー!可愛いとか言ってよー!」

そう言いながら沙雪は拗ねたように頬を膨らませながら僕を無視する様にそっぽを向いた。

「はい、はい。」
「んーじゃあ、いこっか?」
「おー…。ってか、どこに!?」

そう。
僕は急に呼び出され…
『一旦私服に着替えてからね!』

と言う沙雪の言葉通りに待ち合わせ場所の駅に来ただけなのだ。