『アイシテル』を忘れない。


そのメールを読んでから少しして、沙雪が帰ってきた。

「悠ちゃん!行こう?」
「ん。」

僕達は、鞄を持って、生徒指導の先生にみつからないようにそっと学校を抜け出した。


「悠ちゃんー?」
「どうした?なんかあった?」
「海、行きたい!」

僕を期待に満ちた目で見てくる沙雪に、僕は頷くしかなかった。

僕が頷いたのを見て、沙雪は僕の手を握って来た。

「悠ちゃん?」
「んー?」
「早く行こう?」
「はいはい。」

多分今、僕の顔は、真っ赤になっていると思う。
けど、沙雪からこうして手を握ってくれるまで、僕は手を繋がないでおこう、と密かに心に決めていたのに、案外早く手を繋げることになって、
恥ずかしさよりも、

嬉しさの方が勝っていた。


…しばらくバスに乗っていると、海に着いた。
僕らの街は、海が近いから、バスで十分いける。

…ほんとは、自転車で2人乗りとかして来たかったんだけど。

バスから降りると、沙雪ははしゃぎ始めた。

「悠ちゃん!海ー!!」
「んー…、そうだな。」
「もー!悠ちゃんの馬鹿!」