カフェを出て、すっかりわがまま姫になった沙雪。
今度は僕の腕を引っ張って公園に連れてきた。
ここが、僕の運命の分かれ道だったのかもしれない。
「悠ちゃん!ボート、乗ろう?」
「えー…」
「悠ちゃんに拒否権はないの!!」
「やだ。俺にだって拒否権はある。」
だって、ただ、沙雪からしたら『彼氏の親友』それだけで、沙雪と一緒にいれたんだ。
そんなことも、自分では難しいと思い込んでいた。
難しかった。
「那智…。」
「え?」
つい今まで、僕の腕を引っ張っていた力は緩くなった。
僕の親友の名をつぶやきながら。
「…夏音。」
「…………。」
僕達の目の前に、夏音を抱きしめる那智がいた。
那智と僕は目が合った気がした。
沙雪は僕の手をぎゅっと握ってきた。
「さゆ…」
「悠ちゃん、那智たちのとこ、いこっか?」
少しふるえながら。
なぁ、「那智なんかやめて僕と一緒にいてよ。」
そう言ったって、君は居てくれないだろうね。


