「じゃあさ、ちょっとだけ交換しない?」
沙雪は『ちょっとだけ』と言ってわざわざジェスチャーまで付けて僕にお願いをしてきた。
「…やだ。」
「なんでー!?ちょっとだけでいいから!」
…今日、学校でジュースを飲んでたら沙雪が、『美味しそう』って言ったから、
『俺のでよかったら飲む?』
って聞いたら、
『えー!悠ちゃんのはいらないっ』って笑顔で言われたのだ。
「今日学校で俺のは嫌だって言ってたじゃん。」
僕が少しむっとして言うと沙雪はそれに気づいたみたいで、
少しくすっと笑った。
「悠ちゃん、そんなの気にしてたの?」
「なっ…!だって、『悠ちゃんのは』って言われたんだぞ?」
そう言うと沙雪はまた笑って、
僕はその笑顔に心が温かくなったけど、
「だって、那智の前だったでしょ?」
沙雪の、この一言で、
今までのこのカフェでの幸せな気分が一気に失われたような、
そんな気が、した。


