オオカミ少年

「…は?お前、俺とキッ」

自然と体が動いた。
自分でもビックリした。
まさか、葵の前で廉に抱き着くなんて。

「……は?」
動揺している廉からはマヌケな声が聞こえる。

私は廉の手を握り締めて走った。

逃げるが勝ちって言うのはこう言う事だろう。


「何すんだよ」
廉が前髪を書き上げて言う。

私は廉の手を離した。

「何する!?コッチの台詞だよ!!葵の前で…」
「だから?」
冷たい目で私を見つめる廉が怖い。

「あ、葵はアンタの事が…」

「好き??俺の何を見てあの女は俺の事、好きだっと思ってるわけ??」

言われればそうだ。
私も疑問に思う。

何も言わない私を横に廉は深く溜め息を吐いた。

「顔だろ?」

「分かんないじゃん」

どうしてそんなに冷静なの?

「…もしかして忘れた?」

「へ?」

廉の顔が近づく。

私は抵抗出来ないでいた。

再び強引に重なった唇。
だけど、これをキスとは言いたくない。
これは唇が重なっただけ。
こんな愛がない口づけ…。

5秒で離れた唇。
私は走って、その場を去った。

…好きじゃなくてもキスするの?
私が止めて無かったら葵とキスしてたの?
分からないよ…。