そんなに嬉しかったのか。私は当たり前の事を言っただけなのに。

見ると由羽は私に抱き着きながら嬉しそうに笑っていた。
ここまで喜ばれるとなんだか照れ臭くなってくる。

「ほら、由羽離れて。もうそろそろ教室入らないとやばいみたいだよ?」

由羽の肩を軽く押しながら、時計を指差す。
針は教室待機時間の少し前を刺していた。
回りを見てみても、皆徐々に教室のほうに向かって行ってるからか、人が少なくなっていた。

私達の学校の入学式では、いったん、自分達のクラスに行ってから会場に入場するやりたかただ。
なんだか、めんどくさい気もしなくもないが、仕方がない。

「ホントだ、私達も早く行かないと。」

流石に入学式で遅刻は勘弁したい。
麻稀も同じ気持ちのようで、急かす発言をする。

「よし、じゃあ行くか。」

「あ、誰が速いか、かけっこでもする?」

会場に向かって歩きながら、由羽がそんなことを言った。

「どこの小学生だよ。」

「いいじゃん、まだ中学生じゃないんでしょ?」

そう言って、由羽はいたずらっぽく笑った。

やられた。自分が言ったことを逆手に取られるとは。
「やるね、そうくるか。」

「でしょ。」

由羽は得意げに笑って見せた。

「でも、残念だったね。もう教室だよ。」