昔、一度だけ母親に

「貴方のせいでパパは一緒に住めないの」と言われた。

幼い私は意味が分からずに

ひたすら泣いて幼なじみの家まで行った。

その時彼はこう言った

「泣きたい時に泣かなきゃ」

それから泣いて、泣いて、
その子まで泣き出して、

母親が駆けつけた時

「ごめんね」と唇を噛み締めながら言われた。

夢……か。

今なら、薄々分かる。

お母さんが何であんなこと言ったか。

「空、朝よ。早くいらっしゃい。」

目覚めの悪い朝だった。

大橋空。

これが私の名前。

中高一貫の有名私立学校に通っている、高校2年生。

「早く食べて準備しなさい」

こちらが私の母親。

「今日はいらないや」

さっきの目覚めの悪い夢のせいで胸がムカムカして

食べる気が失せてしまった。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

誰かが見送ってくれるのは、どうしてこんなに

安心できるのだろう。

バス停までいくと幼なじみの晋ちゃんの姿が見えた。