「おはよう、ゆんちぃ」

朝、くつ箱でスリッパに履きかえていると、声をかけられた。


わたしの事、ゆんちぃって呼ぶのは、1人しかいない。


「お……はよっ、彩人くん」


ぎこちない返事。



「今日は鑑賞会で、あんまり会えないけど……明日は、空いた時間に、一緒に校内を見て回ろうよ」


いつもと変わらない様子の彩人くん。



まぶしい笑顔――…


ふと、左耳のピアスに目がいって、複雑な心境になったあたしは、

ただ黙ってうつむいた。



目をそらさずにはいられなかった。


昨日、「好き」って認めて、
いきなり失恋したんだから……。



「やっぱ俺じゃダメだよね」


そっぽを向くわたしに、彩人くんが言った。



そして、ポンっとわたしの頭を軽く叩いて。

そのまま背中を向けて、歩き出した。



あ……行っちゃう……っ。


そう思ったわたしは、



「い……一緒に回りたい!」


彩人くんのブレザーの制服を掴んだ。