水を運んできたウェイトレスが彼に話しかけた。

「すみません、いま、あの話を聞いてしまって、その……」

「ん、そうそう、君みたいな美人だったよアイナは」

「私、アイナです」

「……?アイナ?アイナ!?」

「ケーキ屋のレジのお兄さん!あの変な顔の、あはは、すごい、どうして!」



私は静かに席を立つことにした。

長いこと人生をやっていると、つらいことに何度もぶち当たらなければならない。

それでも、奇跡のような出来事に出逢うこともあるのだと知った。

あとはあのウェイトレスに、パートナーがすでにいるかいないか、それを早く聞き出しなさい、と心の中でつぶやいた。