『ただいま。』 リビングを通り、二階に上がる。 『おかえり』と言う母親の声。 部屋に入ってドアを閉めた。 また一粒涙がこぼれ落ちて、その場にしゃがみ込む。 ダメだ…私。 自分で決めたことなのに…。 泣いたら…決心が崩れてしまう…。 引き出しの奥にしまった指輪。 合い鍵と、二人が載った雑誌。 想い出がつまった引き出しに、鍵をかけた。