恐怖心を抱いていたことなら、中にはパニック症状を引き起こす人もいるとか。
『ここよ…。ここに多希は倒れていた…。警察の方が言ってたわ…。』
涙ながらに母親は説明してくれる。
目の前に広がる青白い光。
思わず目を閉じた瞬間の鈍い音。
そうだ…、私…、
車に引かれたんだ。
でも、その先は思い出せない。
生ぬるい風が、私たちの間を通り抜けた。
私は大袈裟なほど、その場で大きく伸びをした。
『でもさぁ〜、なんでこんな場所に居たんだろうね!大学からも、家からも正反対の場所でしょ!?』
『そうね…、この先にあるのは空港だけなんだけど。』
空港………!?
ズキッと頭に痛みがはしる。
『誰かに会う約束でもしていたのかしら…?』
『もう止さないか。これ以上刺激するのはかえって身体に毒だ。』
父親の一言で、嘘のように頭痛が治まった。

