『藤岡菜穂だよ…!忘れんといてよ…!』 もう一度私を抱きしめられる。 『もしかして、彼のことも…!?』 『え……?』 聞き直すと背後の両親を気にして、彼女はそれ以上話さなかった。 何も覚えていない。 初めて聞くことばかり。 そのたびに私は、胸を締め付けられる。 あと私は、何を忘れているんだろう……。