白い約束

『はい。実際、事故に遭ってから…私のことは覚えてくれていません。すっごく悲しかったけど、でもそれは、多希のせいじゃないし仕方ないのかなって…。家族以外、ほとんど覚えてなかったし…。カウンセリング受けてるって聞きました。多希は、記憶が戻る可能性はあるんでしょうか…!?』



ウエイトレスが静かに、ホットコーヒーを2つ、テーブルに並べた。



『正直なところ、わかりません。脳波は異常ないですし、このまま生活する上で差し支えないので、難しいところです。今は、何とも言えません。』



『そう…ですよね。あの、私、テレビや本でしか見たことないんですけど、記憶喪失の人って、記憶が戻る瞬間、かなり激しい頭痛が襲うって本当なんですか…?』




『それは人それぞれです。でもそうなる場合もありますし、何かのきっかけで簡単に戻るケースもあります。我々も、予測不可能なんです。』