「ちょっと待ってよ!」

私が叫んでも啓太のヤツは、私を無視した。

私は慌てて、靴を脱ぐと啓太の後頭部めがけてブン投げた。



スパコーン!

やたっ!命中!



啓太は振り向くと烈火の如く怒った目をしていた。

「てんめぇ!やっぱ、コロス!」

啓太は猛ダッシュして私の元に戻ってきた。

「待って!冷静に!!冷静に・・・」

「させねぇのはてめぇの方だろう!」

「ってか、カノジョは?付き合ってるじゃん、今」


この話題を持ち出すと啓太は突然トーンダウンして、

「ふられた」

と、ぼそっと言った。

「げっ!何で???もしかして・・・失敗した?」

今度ばかりは啓太のゲンコツを交わし切れなかった。

「お前といるとさ・・・・・・、オレって、常にアドレナリン大放出じゃん?
したらさ、なんか物足んなくてさ。他のオンナが。なんか、こう・・・手応えがないっちゅーの?」

「それって、コクってんの?おとしめてんの??」

「だけど、なんかお前ってやっぱさ、凶暴じゃん。
冷静になったら、まだ止められるっちゅーか、間に合うっちゅーか」


すると体育座りをしながら、話している私達の背後で、校門がガラガラと閉まる音がした。


「いやぁ、もう間に合わんだろう・・・」



そうボソリと呟きながら、キョートーセンセーが遅刻者切符を私達の手にしっかりと手渡した。