ストロベリー革命

 直は顔を真っ赤にして、いつものお嬢様の気品はどこへやら。

 恥ずかしくなって思わず手で顔を覆い隠した。

「直様、ここの問題教えてください」

 そんな直のところにクラスメイト達が、数学の教科書を持ってやって来た。

 同学年なのに、皆は直の事を“直様”と呼ぶ。

「どこかしら?」

 学年首位の直は問題をスラスラと解いていく。

 その姿を間近で見ていたクラスメイト達は、「素敵ー」「やっぱり美人だわ」「憧れますわ」など、うっとりとした表情で直に釘付けとなっていた。

 自分の周りでは女の子達がこんなにキャーキャー言っているのに、その声は直の耳に入ってこない。

 入ってくるのは楽しそうに笑う天花の姿だけ。

(……やっぱり俺おかしい。絶対変だっ)

 無意識のうちに姿を追ってしまう。

 完全無欠で頭脳明晰で完璧なお嬢様も、今回ばかりは頭を抱えた。

 もう完全無欠という言葉は似合わない。