「何かの間違いよ。幽霊なんていないわ」

 天花はかなり驚いていたが、直の方は表情一つ崩さずに、いつもの笑顔で笑いかけた。

「で、でも直様、現に見たって人が何人もいるんですのよ! 私その人達に確認して来ました」

「そうだよ直っ!! 幽霊バカにしたら祟りが起こるって、ばあちゃん言ってたよ!!」

 ゆかりと天花は幽霊の存在を力説するが、頭脳明晰・容姿端麗・完全無欠の完璧なお嬢様で通っている直に、幽霊など非現実的なものを信じさせるのは難しい。

「あっ、そういえば明後日の見回りは直様でしたわ! 深夜十二時にこの花壇で、私の分まで幽霊を見て来てくださいな。良い報告を期待してますわ。ごきげんよう」

 言いたい事だけ言うと、ゆかりは校舎の中へ戻って行った。

「…………」

「いいなー。あたしも幽霊に会ってみたーい」

「だったら天花も一緒に来いっ!! なんで俺が学園の見回りなんかしないといけないのっ!? 幽霊なんているに決まってるじゃん!!」