ストロベリー革命

「あっ!! くま吉ー! 会いたかったよー」

 くま吉とは天花が荷物の中に入れて持って来た、その名の通りくまのぬいぐるみである。

 随分と色あせていて古くさく、ボロボロになっている。

 天花は興奮のあまり、くま吉を抱きしめて放ない。

「……天花。このままじゃ片付け終わりそうにないけど……」

 直の言葉で目が覚め、二人は片付けに戻った。

 戻ったのだが、やっぱり左手にはくま吉が存在している。

「そんなに大事なものなの?」

「うんっ!! あたしくま吉がいないと生きていけないよっ」

「でも今日まで生きてるでしょ?」

 荷物を宅急便に出したのは何日か前。

 その間、くま吉は段ボール箱の奥底で眠っていた。天花の手元にはなかったのだ。

「きょ、今日までは生きてこれたけど、明日からは生きていけないんだよ! ……多分」

 都合の良すぎる話だ。そんな話にもかかわらず、直は呆れるどころか笑っていた。

 がさつに大声で笑うのではなく、桜のような優しい微笑みを見せている。