「天花っ!! 俺さっき凄いもの見ちゃったんだけっ……」

 全速力で戻って来たというのに天花は、

「ほらっ、くま吉綺麗にしたからこれで許してくださーい」

 ドアの前で正座して、少しばかり綺麗になったくま吉を差し出してきた。

「それどころじゃないんだよっ!!」

 直にとっては一大事なのに、その空気をちっとも読めていない天花。

 あまりにも天然が酷いため、直は天花の頭を叩いた。

「いったーい!! 何すんの!? せっかくくま吉を綺麗にしたのにー」

「ぬいぐるみはもういいから! それよりアイツ、藤堂怜華って彼氏いるの!?」

「かれしぃー? 全然知らない。いるの?」

 何をそんなに慌てているのかと思えば、人の色恋沙汰である。

 恋愛にまったく無関心な天花は、どうでもよさそうに、くま吉を撫でていた。

「さっき衝撃的なもの見ちゃった!! 藤堂怜華が隣の男子校の生徒とキキキッ、キスしてたのっ!!」

「やっちゃダメなのー?」