(いくら一緒の部屋だからって、やっていい事と悪い事がある!)

「ごめんごめーっん。あたしのくま吉で許してよー」

「あんな老いぼれた熊が代わりになるワケないじゃんっ!! 天花のアホ!」

 興奮した直は部屋から出て行った。

「天花の奴、信じらんないよ」

 ぶつぶつ文句を言いながら、とりあえず校舎裏の花壇までやって来た。

 どこにも行くあてがなかったから、こんな所まで来てしまったのである。

「はぁー……」

 ため息をついて綺麗に咲いている花を見つめる。

「……ぁあっ!?」

 何かを目撃したらしく、直は顔を赤くして素早く校舎の影に隠れた。

「ななななっ、何あれっ!? 何やってんの!?」

 それはドラマや漫画では何回か見た事ある。

 もちろんやった経験なんてないし、生で見るのは初めてだ。

(……俺、知らないよ)

 びっくりしすぎて、いつしかぬいぐるみの恨みなど消えてしまった。

 天花に伝えようと、直は走って部屋に戻った。