推測だけど、きっと彼は私が拒めば何もしないだろう。なんとなく確信があった。 「私の知ってる蔵橋くんはそんなことしないわ」 「……先生はさ、ずるいよね。今も昔も」 ずるい言い方をしたな、とは思う。でもそれが29年間生きてきて身に付いてしまったことだから。 「お互い様でしょ。今日はもう帰るね。コーヒーありがと」 そう言ってコートとバッグを持って立ち上がる。 「……やだ」 そう呟くなりいきなり私の手を引っ張って座ってる蔵橋くんに突っ込む形に。