執事と共に聖夜を。

「もう1回、聞きたいな」

「……では、私からもささやかなクリスマスプレゼントを」


春樹はレコードプレイヤーではなくピアノの前に座った。


「やっぱり、貴方が弾いていたのね」

「主人のピアノに勝手に触れるご無礼をお許し下さい」


と慇懃に頭を下げていた。

そして鍵盤の前に座り、静かに指を置いた。


――Happy Christmas ERIYA.


春樹は低い声で囁いた。

そして、弾きはじめる。

歌うことはしない。

ただ、その旋律のなかで恵理夜は、両親の声を思い出していた。