執事と共に聖夜を。

――The ……d is so …ong――


「やはり、私には聞き取れませんね」


答え合わせは、出来ない。


「いいの」


恵理夜は清々しく笑った。


「私はちっぽけで、大きな世界を変える力なんてないもの。でもね、」


――曲が終わる。


「私の周りが幸せならいい。私には、それが世界だから」


恵理夜はしっかりと春樹を見ていた。


「その為に、最大限の努力を致しましょう」

「貴方を含めて、幸せと言ってるのよ」


おや、と春樹は眉をあげた。


「私は不幸ではありません」


幸せですよ、と言わない辺りが彼らしい。

言葉は嘘をつくことを彼は知っている。


「貴方がそうでありつづけることを祈るわ」


その言葉に、春樹は何時になく穏やかに微笑んだ。


「貴女が望むのであれば」


その先に、何が続くのかはわからない。

幸福の約束は誰にもできない。

しかし、不幸にならないための約束が、そこにはあった。