執事と共に聖夜を。

「春樹。レコード、聞きたいな」

「はい」


いつの間にか心得たのか、いつもと同じ、淀みない丁寧な手つきでレコードをかけた。


――Happy Christmas KYOUKO.

――Happy Christmas JULIAN.


ジョン・レノンとオノ・ヨーコの囁き声が聞こえる。


「……ヨーコとジョンじゃないんだ」

「学校ではそう習いましたか?」

「うん」

「……その名前は、二人が結婚する前の結婚相手の子供のものです」

「前の……」


世界中で流れるこの偉大な歌にも、離れて生きる子の名を入れる――深い愛を感じた。


恵理夜は涙した。


あのクローゼットが遺書だとしたら、そこに残されたこのレコードからも、恵理夜は同じ愛を感じた。

姿かたちが亡くなってもなお、自分を愛そうとしてくれる――そんな深い愛に包まれている、と恵理夜は思った。


妄想と言われても構わない、恵理夜のこの思いは真実なのだから。